介護生活の後に待つ問題
親が認知症などで介護生活が始まり、出来るだけ面倒をみてあげたいと同居生活を始めた場合、それは大変厳しい生活になるかと思います。
認知症などの症状によっては夜中に起きたり、大きな音をたてたりする方もいます。
これまでの日常とは全く違う状況に血のつながりのない配偶者は非常に強いストレスを感じることでしょう。
苦労した介護生活の後に待つものは‥
こういった大変な苦労をして介護生活を終えたあとに待つのが相続問題です。
近年、相続問題について家庭裁判所が扱った遺産分割の事件は10年前に比べて約3割も増加しています。
相続問題というとお金持ちの方々の問題だととらえがちですが、遺産分割事件の中の3割は遺産1000万円以下、5000万円以下も含めるとその数は7割を占めます。
1000万円~5000万円というと非常に大金ですがこの遺産の額には親名義の不動産なども含まれますのであながち他人事ではありません。
これだけ相続問題が増加傾向にある理由は、やはり不景気による現役世代の厳しい家計事情などがあるのかもしれません。
「法律通りの分け方をしたらそれで大丈夫でしょ」と思うけど‥
「法律では法定相続分というのがあってその割合の通りにすれば争うこともなくみんな納得してくれるだろうから大丈夫」と考えられるかもしれません。
しかし、実際にはそう簡単な話ではありません。
先ほども述べたように親の遺産には不動産も含まれます。
国税庁の調べによると遺産の5割程度は不動産だとされています。
ではその不動産に兄弟の誰かが住んでいた場合はどうやって分けるのか、といった問題もおこります。
また、不動産を相続人全員の共有名義にしてしまうと相続した後、売却するには全員が関与しなければならず難しくなるからとりあえず一番上の兄弟の名義にして、売却したあと他の兄弟にはそれ相応のお金をあげる、といって兄弟の一人の名前にして売却したが、その後その兄弟からは少ししかお金をもらえなかったケースなどのご相談もありました。
そして、冒頭に書いたように同居して介護生活を送っていた兄弟がいる場合はさらに感情として複雑になっていきます。
あれだけ苦労して親を看取ったのになにもしていない兄弟と相続では同じ額なのかと思うこともあるでしょう。
寄与分という制度もあるが‥
法律には「寄与分」というものがあります。
これは亡くなった人に寄与した相続人がその分、多く遺産をもらえるのですが、寄与分が実際に認められるのは非常に難しいのが現実です。
また、介護生活を支えていたのが血のつながりのない配偶者の場合はそもそも相続人ではありませんので寄与分がどうこう以前の問題でなにも報われないのが現状です。
こういったことから実際には法定相続分通りだから問題がない、とは限りません。
これを回避するには親が元気なうちに遺言書によって同居している子どもは家を相続させ、その他の兄弟には預金や保険金をあてるなど、トラブルを未然に防ぐように制度を活用し、場合によっては専門家に相談することが最良だと思います。