前回の記事では銀行などの金融機関が提供している「遺言信託」は法律上の信託とは違い、弁護士や司法書士、行政書士などが行っている一般的な相続業務とあまり違いがないことをお話してきました。
では実際に相続に関するサービスをお願いしたいとき、士業に依頼するのがいいのか、もしくは銀行などがいいのか、比較検討していきましょう。
サービスの違いを見てみよう
①遺言書作成の比較
遺言書の作成においては前回の記事でもお話しましたが、手続き的な流れにも違いはほとんどないかと思います。
しかし、多くの専門家は事務所自体で対応するのに対し、金融機関はコーディネータ―的な役割を担いますので銀行は提携している士業に作業をお願いする事が多いので費用は高額になりがちです。
ですので、金融機関のサービスは別途専門家費用が掛かります。
では専門家に依頼するか、銀行に依頼するのかの判断をどこで判断するのかというと、結論としては、遺言者の好みによるところになると思います。
どれだけお互いのコミュニケーションを取れるのかということを重視する方もいれば費用が安い方がいい方もいますし、銀行なら信頼できるという方もおられます。
私たちの経験上では、これまでに受けた遺言書の作成のご依頼の中で、ひとつとして全く同じケースというものはありません。似たような環境や財産、家族構成はあれど、本人のこれまでの生い立ちや感情、家族への想いなどは様々であり、そのお気持ちを基礎として遺言というものを考えていく以上、十人十色になっていくものです。
銀行などの不特定多数のお客様を対応する上ではどうしても画一的な処理をする必要に迫られる部分があり、それがサービスの安定性に繋がっていてそれを好む方もおられます。
本人がしっかり遺言事項を自分で決めていて尚且つ銀行の信頼感や安定性を望んでおられ費用が高額でも仕方ないと納得されるならば銀行のサービスは最適かと思います。
他方、色々と面談をしていくとご本人が考えていなかった感情や希望などが表に出ることもあります。そういったひとつひとつのご依頼に丁寧に向き合ってもらうことを望まれる場合には「相続を専門」に扱っている専門家が知識や手法の面からも頼りになると思います。
また専門家には強引な人や忙しくて画一的にしか判断しない人、勉強しかしてこなかったのかというようなコミュニケーションに難のある人もたまに見かけます。そういったことも銀行のような大手ではまずあり得ないことでしょう。
もしも、専門家に依頼を頼むことをお考えならば、ほとんどの専門家は事前の相談を受け付けていますので、その中でその人の人となりなどを確認するか、以前遺言書を作られた方に聞いてみるなど、ある程度確認してから正式に依頼するのが良い専門家選びのコツかと思います。
次回は銀行が提供している「②遺言書保管サービス」についてお話していきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。