後見制度を利用する?利用しない? その2
前回の記事では後見制度を利用するうえで市民後見人という選択肢をご紹介しました。しかし、そもそも成年後見制度を利用すると財産が後見人や裁判所によって管理され、実質的に資産凍結に近い状態になることから敬遠しているという人が多いのではないでしょうか。
そもそも後見制度を利用しなくちゃいけないの?
認知症などを患った親が当事者となって新しい契約を締結するということであれば本来は後見制度を利用するのが適切ではあると思いますが、現実的にはそういった契約などのほとんどは介護サービスの利用や施設への入所といった限られた場面がほとんどでしょうし、そういった場合、施設もある程度は融通をきかせてくれることが多いようなので、必ずしも認知症の親が契約の当事者だからと後見制度を利用する必要は少ないかもしれません。
しかし、前回の記事でも書いたように後見制度を利用することで親の財産は適切に管理され、親のために適切に財産を利用することもでき、のちの相続の際にも「流用していたのではないか」といったあらぬ疑いなどの問題はほぼ解消されます。
じゃあ財産が凍結するっていうのはどういうこと?
実際に後見制度を利用した場合に問題となってくるのは親が金融機関や証券会社に資産を預けている場合です。
金融機関や証券会社は各々多少の違いはありますが、後見人が就任すると後見人以外の人は預貯金などをどうすることも出来なくなります。親の預貯金の一部から孫への学費の一部を贈与してもらいたいといったことも当然できませんし、仮に株式が上昇する又は下降することが容易に判断できたとしてもその株式の売買はまず不可能です。
こういったケースの前に利用すると便利かもしれないサービスとして金融機関や証券会社の一部では「任意代理」という仕組みがあります。
「任意代理」ってなに?
本来、親の預貯金を子が引き出す場合や親の株式の売買を子が行う場合にはその都度、親の委任により子が代理することを委任状に記して行うことが一般的ですが、任意代理では金融機関や証券会社が用意する届け出書類に預貯金や株式を預けている親と代理人となる子が必要事項を記載して提出し、親子と金融機関や証券会社が面談を行い、代理行為の意思を確認すれば、あとはその代理行為の範囲でいつでも代理人である子が自由に預貯金の入出金を行い、株式であれば売買を行えるというものです。
どこの金融機関とかでも大丈夫?
ただし、こういった「任意代理」を行っている金融機関や証券会社は三井住友銀行や野村証券といった大手の企業であり、全ての金融機関や証券会社が行っているわけではありません。また、金融機関等によって用意されている書類の代理行為の範囲はそれぞれ違いがあり、一切の行為を行うことができるものから、出金限度額を設けているところもあります。口座の解約といった重要な行為もできないところが多く、株式の場合は信用取引といったリスクの高い行為は代理行為では行うことができないなど様々な制限があります。
しかし、任意代理を親の判断能力があるうちに行っておくことで親の判断能力があるうちは子が入出金や株式の売買などの取引を行うこともできますし、判断能力が衰え始めたときにも子によって色々と準備を行うことも可能になるかと思いますのでひとつの有効な手段になるかと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。