成年後見と家族信託
そもそも家族信託って?
平成18年に信託法が新しくなることが公布され、そして平成19年に新しい信託法が施行されました。
これにより、認知症対策についても新しい方法がとれるようになり、現在活用されています。
簡単に内容を説明すると、認知症になったときに、本人名義の不動産の処分や預貯金の引き出しができなくなってしまうおそれがあるので、事前に信託という契約をしておいて備えようというものです。
認知症を発症するとお金の問題もおきやすい
認知症や高齢になった場合、バリアフリーの住居に引っ越したり、介護施設への入居、それにともなう費用の支払い等、お金の問題が発生しがちです。
そのお金の問題を解決するために、上記のような不動産の処分や預貯金の引き出しを行うのですが、その場限りのたった1回か2回のために、一生涯報酬の支払が必要となる可能性の高い成年後見制度は、家族にとっては大きな負担となることは間違いありません。
成年後見人になる人の割合
家庭裁判所のデータでは親族が成年後見人となっているケースは約3割、つまり7割は他人ということで、報酬を免除してくれるということは考えにくいでしょう。そこで俗にいう「家族信託」が役立つのですが、ひとつ今後どうなるかわからないことがあります。
家族信託の不確定要素
成年後見制度にあって、家族信託にないもの。
それは身上配慮に関することです。
法律にはこう書かれています。
民法第858条
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
具体的にどういったことかというと、必要であれば、病院への入院や介護施設への入所の手続きを行ったりと、実生活の環境を整える役割を果たすことです。
現在、こういった介護施設や病院への手続きは、家族という立場で行える場合が多いかと思います。
実際緊急の治療が必要な場合に、悠長に成年後見の手続きが終わるまで何もできないとなれば、こんな馬鹿な話はありません。
ただ緊急性が低い場合はどうでしょうか?
そしてその緊急性の程度の判断基準は?
法律の条文が存在する以上、どこかで線引きが行われないとも限りません。
もし線引きが行われるとしたら、どこでどういった線引きとなるのか、個人的に非常に気になるところです。